reunion again.





ある日、僕はレシラムの鳴き声で目を覚ました。時間はまだ朝の6時で、ようやく昇ってきた太陽がうすぼんやりと机の上を照らしていた。レシラムのモンスターボールはがくがく揺れている。まだはっきりとしてない意識のまましばらくぼーっとしていたら、突然ライブキャスターが鳴り始める。それを缶切りに意識は覚醒して、僕は急いでライブキャスターに出る。それは待ち望んでいた連絡だった。

「今日、Nが釈放されるよ。」

そう告げたハンサムさんの声は少し嬉しそうだった。僕はそれが夢か現実か分からなくて、しばらく返事も出来ず、ハンサムさんを少し心配させてしまった。彼の居場所と時間を教えてもらい、電話を切る。机の上に置きっぱなしだったNからの手紙を引き出しの中にしまいこむ。この手紙にはそんなこと欠片も書いてなかった。結構急なことだったのかも。国際警察のことはよくわからない。レシラムをボールから出すと、自慢げに一声啼いた。ああ、きっと君にはあの電話が来ることが分かっていたんだね。なにせゼクロムとレシラムは元は同一の存在だ。軽く撫でてやるとレシラムは喉を鳴らした。


レシラムに乗ってその場所へ急ぐ。着いたときは約束の時間30分前だった。ちょっと早く着すぎてしまったかもしれない。目の前には大きな門があって、僕はその前でレシラムと一緒にじっと時間が来るのを待ち続ける。

彼がいなくなってから。朝遅く起きるのを止めてくれる人はいなくなった。おかえりの声は聞こえなくなった。長い月日は僕の生活を一人でも生きていけるようなものにしたけど、淋しさは埋まらなかった。ポケモン達と一緒に居てもやっぱり彼がいなきゃどこか淋しく感じてしまう。

時間5分前。僕は微動だにしないでその場所で待つ。レシラムの毛と木々が風にたなびいてとても綺麗だ。

彼に知らせたいことが沢山ある。僕のポケモンの最近とか、図鑑が完成間近なこととか、僕がどれだけ彼が好きなのかとか。彼から聞きたいことも同じように沢山ある。彼のことを知りたい。全部じゃなくてもいい、少しづつ話して言ってくれたらいい。ゆっくりと歩み寄っていけれたら。それで、彼の痛みを知って、少しでも辛さを分け合えることができたら。それはきっととても素晴らしいことだ。

時間1分前。ぎぎぎ、と扉が軋む音がした。ゆっくりと扉が開き始める。

もしかしたらこの気持ちは依存なのかもしれない。彼無しでは淋しくて仕方がない。そう、彼のせいだ。僕がひとりじゃどうしようもないくらい切ないのも、彼のことを考えてやまないのも。……最後の日、観覧車でキスをしてから。あのときからもう、彼以外考えられない。多分あそこが僕達のターニングポイントだったんだろう。もう後戻りは出来ない。

扉は完全に開ききった。扉の向こうからぶわっと風が吹き込む。僕は思わず扉の向こうを見る目を細めて、レシラムに支えてもらった。ぼんやりと人影が見える。黒い竜を従えた人影が。

ねぇN、僕は君無しじゃ生きていけなくなっちゃった。だからさ、これからは――

地を踏みしめる足はしっかりとしていた。顔も声もなにもかもあのときとそう変わってはいない。彼は僕に気付いたようでこちらに歩いてくる。僕は彼がこちらに来るのを待っていた。手を伸ばせば届くくらいのところで彼は僕に抱きついてきた。僕もそれをしっかりと受け止める。お互い満面の笑顔で。

「ただいま、ブラック。」
「おかえり、N!」

――一緒にいよう。ずっと、ずっと。





再再会 / 101015