Join hands.





リュウラセンの塔で暫く話したあと、とりあえずカノコタウンの僕の家に行こうという流れになった。お互いレシラムとゼクロムに乗って、空を飛ぶ。こころなしかいつもよりレシラムの飛ぶスピードが速い気がした。彼もきっと嬉しいのだろう。
伝説のポケモン二体を出していくのは流石にどうかなと思ったので、(きっとパニックに陥るだろうし、)カラクサタウン手前の道路で降りて歩いていくことになった。カラクサタウンは僕達が初めて出会ったときと殆ど変わらないままだった。

「懐かしいな、ここでキミと初めて戦ったんだっけ。」
「そうだね、あのときのチョロネコは立派にレパルダスになってるみたいだよ。」
「へぇ、キミは彼女に会ったのかい?」
「僕のグラエナとすっかり仲良しになってる。ちょっと羨ましいかも。」

さらさら、風に草が揺れて時折ポケモンたちの顔がのぞく。なんてことのないいつもの光景の筈なのに、なぜか今日は胸が暖かくなる。一番道路、僕の旅路の出発点。そこに彼と一緒に帰れることが何よりも嬉しい。
と、なんとなく感慨に耽っていたらNが脇道に逸れようとしていた。

「ちょっと!どこ行こうとしてるのさ。」
「あ、ごめんごめんブラック。今そこにヨーテリーが、」
「もー……。とりあえず先にカノコに行こう?あとでまた会いに来ればいいじゃない。」
「うん、そうするよ。」

にこっと笑いながら言われても、やっぱりちょっと危なっかしい。よく考えてみたらNって相当世間知らずのマイペースなんじゃないだろうか。
ひとつ嘆息してから、手を差し出す。Nはその手を不思議そうに暫く見つめていた。なんかそうしてると恥ずかしくなってきて、手を急いで引っ込めた。そうしたらNはようやく合点がいったという顔をして、引っ込めた僕の手を追いかけて、ぎゅっと握った。

「ありがとう。」
「……どういたしまして。」

そんなことするなんて反則だ。ずるい。
恥ずかしさと照れくささとなんだかよくわからない胸のどきどきがごちゃ混ぜになって、僕はNを引っ張るようにしてカノコタウンに歩を進めた。Nは僕の様子がおかしいのか笑いながらついてくる。とっても楽しそうに。ほんとに、どうしちゃったんだろう、僕。少なくとも僕より年上だろうひとに可愛いとか思っちゃうなんて。

でも、こうしてたら。少なくとも手をつないでいる間はNはどこにも行かない。僕の隣できっと、笑っていてくれる。それがなんだかとても、幸せだった。


つながる。ようやく。 / 101001