君が去って、この世界はもとの灰色になりました。
もともとこの世界は黒と白とは分けられていませんでした。全ては混じり合って灰色でした。灰色がこの世界の全てでした。
もし君がそれは違うというならば、それはきっと君と僕がこの世界を二つに分けていたのだと思います。理想と現実と、互いの色を塗り潰してしまおうとして。
だけどそれは徒労でした。だって世界は元から全部ごちゃまぜで、純粋な色なんてなにもなくて、全ては混ざって灰色になっていただけなのです。
僕は白色で君は黒色でした。
僕はどこへ向かうかも知れずふらふらと、いろんな他の色と混じり合いながら旅をしました。
君は確固たる意思をもち、君の思想を広め、黒で世界を塗り潰そうと旅をしました。
僕らは結局無駄な争いをしていました。解放解放なんて言って、それで全てが丸く収まることはない。だって世界は黒でもなく白でもなく灰色で、意見なんて違うのが当たり前だからです。
君が去った世界はどうしようもなく灰色です。だけどきっとその灰色のなかにひとりひとりの思いとか、一味違った色がうっすらあるはずなのです。
それが僕が僕の旅で学んだこと。

君は今何を学んでいますか。黒色は少しは濁ったのでしょうか。
あのときの僕のくすんだ白色は、すこしでも君の黒色に混じって、その色を濁らせることが出来たでしょうか。

願わくば君に幸多からんことを。
そしていつか唯一無二の灰色になった君を、僕のこの腕で抱きしめることができたらいいなと思います。


くろとしろとはいいろ / 110916