Good morning! 朝起きて部屋にNを起こしに行くと、そこには誰もいなかった。もしかしていなくなったのかと思いながら大急ぎで家中を探しまわってたら外からびりびりという音がした。まさか、と思って外に出てみると、そこにはやっぱりNとゼクロムがいた。しかもゼクロムはクロスサンダーを今にも出そうかってくらい尻尾の部分を青色に光らせている。Nは僕が来たことに気付いたようで眠たそうな声でおはようと言った。僕も挨拶を返す。 「おはようN、一体何してるのさ?」 「最近ゼクロムに放電させてなかったから放電させようかと思ってね。定期的に電気を出さないと調子が悪くなるんだ。」 「ああ、成程。」 そういえば僕のゼブライカも電気技をしばらく使わせないと、身体の周りにいっつも静電気をまとってるみたいになってたっけ。やっぱり伝説のポケモンでもそういうことになるんだ。なんとなく親近感が湧いてゼクロムを撫でようと手を伸ばす。その手はゼクロムの肌に届く前にNに掴まれた。 「今ゼクロムに触ったら危ないよ。痺れる。」 「そんなに痺れるの?」 「少なくともギギギアルとは比べ物にならないくらいかな。」 「……うん、やめとく。」 やっぱりそこは伝説のポケモンらしい。そういえばゼクロムは雷雲を作れるくらいの電気を発電できるんだっけ。危ない危ない。そんなことを思っていたら腰に違和感を感じた。レシラムの入ったモンスターボールが動いている。ああ、君も外に出たいんだね。ひょいとボールを投げてレシラムを外へ出す。レシラムとゼクロムはお互いの姿を認めると一声嘶いて、相手に電撃と火炎を放った。 「ちょっと、なにやってるんだよレシラム!」 「大丈夫だよブラック、挨拶変わりみたいなものだから。」 慌てた僕をNは楽しそうに見ている。二匹もどうやら重傷は負っておらず、どちらかと言えば楽しそうにしていた。なんだか僕だけが仲間外れみたいでむうと呻ったら、Nがキミもポケモンの言葉が分かればいいのにね、と言ってきた。それはNの専売特許だろと返したら、別にボクだけでもないと思うけどなぁと言われた。そうなのかな、そうなのかもしれない。この世界は広いから、世界のどこかにはNと同じようにポケモンの言葉が分かる人の二人や三人はいるだろう。でも。 「まぁ、僕はいいや。言葉が分からなくても。」 「どうして?」 純粋に謎に思っているんだろう。聞いてきたNに答える。 「言わなくたって分かることだって在るんだよ。言わなきゃ伝わらないことも在るけどさ。」 「そういうものなのかな。」 「そういうものなんだよ。……それに分からないときはNに聞けばいいしね。」 だってこれから一緒にいてくれるんでしょう?と、言外に含めて言ってみる。Nは気が向いたらね、と笑いながら言った。それを肯定と受け取って僕も笑う。 言わなくたって伝わること。言わなくっちゃ伝わらないこと。きっとそれは数え切れないほど沢山ある。だけど僕と君とならきっと。少しずつでいい、一緒に学んでいきたい。 そしていつか――。 僕の思考はそこで止まった。僕は、何を。愕然としていたら、Nが掴んだままの僕の手を引っ張って、僕の底の方に沈んでいた意識は急浮上する。今ならゼクロムに触れると思うよ。僕は断続するさっきの思考をそこで打ち切った。考えても仕方ない。Nの申出を受けて、ゼクロムの方に歩きだす。ついでにレシラムの毛並みも整えてやろう。 遠くの方でマメパトの鳴く声がした。きっと、今日もいい日だ。 その思考の続きを彼が知るのはもう少し先のお話。 (君に、伝えたいことがあるんだ。) |
あるあさの / 101006