It's my crow.



黒い黒い闇色に溶けてしまいそうなその色を、手に入れたいと思うのはいけないことだろうか。烏のように黒い翼広げて、今にも大空に飛び立ってしまいそうな。手を伸ばしてももう人間でもない俺の手は決してとどかなくて。多分俺達は道を違ってしまったのだと理解したのはいつだっただろうか。

でも、理解してもなお、俺の中であの学園生活が輝きを失うことはないし、手を伸ばすのを止めようとも思わない。 きっとこの手が取られることはないと分かっているけれど、0.000000001%でも希望が残っているうちはこの手を下すことなどできないから。お前を諦めることなんて――出来やしないんだ。

ホテルの部屋にあったTVを付ける。ぱちん、と安っぽい音がして緑色のランプが付いた。画面を見ると、どうやらようやく前座が終わったみたいだ。溢れんばかりの歓声と熱狂が会場を支配している。そして、裏に繋がっているだろう通路から黒尽くめの服を着た男が現れた。そいつは歓声を一身に受け止め、天に高く指を振り上げる。
「一、十、百、千、万丈目サンダー!!!」
観客も一緒になってサンダーコールを叫ぶ。相変わらず、だ。本当に。ブラウン管の中で鮮やかなデュエルを繰り広げる彼を見ていたら、気付いたら無意識に微笑んでいた。


烏、烏、俺の手折った翼はもうお前を止めることはできないから。だからせめて大空の下で舞っていてくれ、お前の姿を俺が見守ることができるように。




独占したいもの/とどかないもの/もしくは大切な過去≒恋 / 100629