彼の血は、きっと素敵な緑色だろう。


red?green?


「てめーなぁ、いい加減現実見ろ。人間の血が緑色な訳ねーだろ。アホか。」
「やめてよシズちゃーん、シズちゃんの血が人間と同じ赤色な訳ないじゃん。何言ってるの?」
呆れるように言った彼の言葉に俺は当り前のように皮肉を返す。

分かってる。静雄の言っている現実は今まさしく俺の目の前に在る。たらり、先刻俺のナイフが切り裂いた彼のシャツの隙間から血が垂れた。静雄はその感覚が不快だったのか、より一層眉間の皺を深くし、すぐ振り回せるように両手で持っていた道路標識から片手を離し指で血を拭った。指を染めた血の色は、俺と、人間と同じ、赤色。ああ、理解している。君が生物学上俺と同じ人類だってことも、愛すべき人間であることも。
ただ――認めたくない、それだけだ。

(だって認めちゃったら何で俺は君を愛してあげることが出来ないのかっていう問いに答えを出さなきゃいけないでしょ?)


だから君は化け物でいなきゃいけないよ、なんて酷く身勝手なことを心の中で呟きながら、迫り来る自動販売機を掻い潜って、彼と一緒に池袋の街に駆けだした。






(絶対に答えなんて出るはずがないんだから!) / 100418