突然現れた妖精さんは僕にいうのだ。君の欲しいものはなぁに。僕は少し悩んだ後、なにもいらないと言った。うそ、とすぐその妖精さんは返してきた。人間は誰だって欲しいものがあるはずだよ、と。僕は、でも僕にはいらないんだと言った。妖精さんはすこし不機嫌な顔になってむぅと拗ねた。君の欲しいものはなぁに、と僕はそのこに尋ねた。私は与えるために生まれてきたのよとそのこは言った。君の欲しいものを知る手段が欲しい、と。僕はそう返ってくるとは思わなくて、困った。無いものを知る、なんてことは多分出来ないことだと思ったから。ごめんね、と謝ると妖精さんはわっと声をあげて泣き出した。ごめんね、ごめんね、繰り返してもちっともそのこは泣きやまなかった。どうしようかと悩んでたら、閃いた。ねぇ、それならさ僕が欲しいものを見つけるまで待ってよ。それを聞いたその妖精さんはぽかんとした表情を見せた。伝わっていないようで、僕は僕なりに懸命に説明する。つまり、僕の欲しいものが見つかるまで待ってもらうっていうのが僕はほしい。そう言ったら妖精さんはぷっと吹き出して、意味分かんないよそれ、と笑った。その笑顔はまるで花が咲いたみたいだった。それを見て僕は、このままずっと欲しいものなんて見つからなくてもいいかもしれない、と思った。(君が欲しい。)



僕と妖精 / 111221