俺は熱いデュエルがしたいんだよと熱もあらわに言った男に、知っているさと私はちいさく呟いた。聞こえていなくても聞こえていてもどちらでもいいと思った。ただ自分に言い聞かせたようなものだったから。その声はおそらくいつもなら吐き捨てるような甘さが含まれていた。
知っている。お前がどんなデュエルが好きかとかどんなモンスターを使っているのかとかだけじゃなくて、それより他の、きっと私くらいしか知らないだろうようなこと。教えてもらった訳ではないけれど、見ていて一緒にいて分かったこと。あくまで仕事中だけだけれど。私の同僚のがさつでなんでもノリで片付けるような男はなんだかんだいって、熱苦しいと思うくらい熱いし熱中しやすくて他のものが見えなくなったりすることも何度もあったけれど、一本芯が通っていて、それに私は幾度も救われているのだ。あの少年との戦いのときだって。自分は彼にとって仕事に厳しい同僚というだけじゃなくて、守りたいものになっていると、そう考えるとやけに口元が緩んだ。
では私とデュエルをするかと聞いたら男は目を輝かせて食いついてきた。お前もやっぱり熱いデュエルが好きなんだなと言う男にどうだかなと答えをはぐらかす。返ってきた知ってるさという言葉はいつもならやっぱり吐き捨てるような甘さを含んでいて、もしかしたら仕事中以外のことも知ることができるかもしれないなと思った。


君と僕の交差点 / 120124