「道連れになってくれませんか」 桃色の髪に、可愛らしい女子のような顔をしたこいつに真剣にそんなことを言われると、大低の男は思わず頷いてしまうだろう。だが残念ながら俺にはこいつが男だということは分かっていたし、さらに言うとこいつの道連れになる気は更々無かった。 「お前はお前が好きな道を行けばいい」 言外に俺は俺の道を行くと言うと、Vはすこし俯いた。こいつはおそらく遊馬たちのところへ行くのだろう。兄貴に似ず、こいつは優しいやつだということはこれまでで十分に知った。家族の暴走を止めるため敵へつく。すこしばかり、羨ましいと思った。俺には暴走を止めるような家族はいない、そればかりか家族のためと言い訳をして戦っているのだから。一緒に戦おうなんてできる筈がないのだ、だって根本から違っている。 だけど、俺は俺の選んだ道はもっともな道だと思っているし、Vの選んだ道は素晴らしいものだと思う。 ただ、行き先が違うだけだ。 うなだれるVの頭に手を乗せくしゃくしゃと髪を掻き回した。驚いたような顔をしたVは、俺の顔をまじまじと見てそれから泣きだしそうな顔で抱き着いてきた。すこし震えているその背中をゆっくりとさすりながら、こいつは優しすぎるんだと溜息を吐いた。 さて、この小鳥は家族という群れから離れてその群れに立ち向かうことが出来るのだろうか。それは分からない、こいつかどこまでやれるのかなんてきっとこいつにも分かっていないだろう。きっとこいつにとっては群れから離れるなんて初めての経験だろうから。 でも、それでも、すこしばかりは縋らせてやってもいいと思った。道連れにはなれないけれど、止まり木くらいにはなってやってもいい。先の見えない暗闇に一人立たされる恐怖を知っている。言葉と言葉がぶつかるときにできる傷も知っている。復讐が醜いことだと知っている。知っていて、それでも往くのだ。 案外俺とこいつは似ているのかもしれないとふと思った。


止まり木を失くした小鳥たち / 120211